財務から見るAI企業 ~サービス型編~ | QuestHub Insights

財務から見るAI企業 ~サービス型編~

近頃最も注目を集めている技術がAI(人工知能)だ。「ディープラーニング」や「シンギュラリティ」といったAIに関連する言葉を目にする機会も多くなった。米Alphabet傘下の英DeepMindが開発したコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」や国立情報学研究所が2011~16年に研究していた東大合格を目指すAI「東ロボくんプロジェクト」のようにAI関連の興味深いニュースも多い。

こうした状況を踏まえ、今回はAI企業に焦点を当て、その実態について特に財務面から分析し、2回に分けて特集する。
分析を進めていく中で、一口にAI企業と言っても多種多様な特色や展望を持っていることがわかった。今最も熱い業界と言っても過言ではないAI企業を見ていこう。
(QuestHub Insights編集部)


Gordon JohnsonによるPixabayからの画像)

AI企業は大きく2種類

AI企業と一口に言ってもそのビジネスモデルで大きく二つに分けられる。
一つはAIライセンスやAIを組み込んだソフトウェアを販売する「サービス型」と、AIベンダーの紹介や、AI導入に関してコンサルティングをプロジェクト単位で行い、その労働に対してフィーをもらう「プロジェクト型」の二つだ。(サービス型とプロジェクト型という名称は本記事において便宜的につけたものにすぎず、一般的な名称ではないことにご留意願いたい。)

本記事では、17年以降にIPOしたAI関連企業の中から、初値が公募株価の2倍以上ついた以下の7社に焦点を当て、それぞれサービス型かプロジェクト型に分類したうえで、二つの型ごとに各社の特徴を見ていく。尚、以降は会社の名前は略称を用いる。

会社名(略称)

PKSHA Technology(PKSHA)
HEROZ(HEROZ)
ユーザーローカル
Kudan
RPAホールディングス(RPA)
エル・ティー・エス(LTS)
サインポスト

このサービス型企業とプロジェクト型企業の違いはビジネスモデルだけではない。例えば営業利益率をみるとサービス型企業の営業利益率は30%を超える。それに対し、プロジェクト型企業の営業利益率は10%程度だ。

一方で、PER(実績)はサービス型企業、プロジェクト型企業ともに非常に高い。市場がAI企業へ期待を持っていることがよくわかる。

ではここからサービス型とプロジェクト型のそれぞれの企業について個別にみていこう。
第一回目となる本記事では、サービス型企業を特集する。

積極投資を行うPKSHA

PKSHAは他社製品に組込むアルゴリズムモジュールと、自社製品であるアルゴリズムソフトウェアの2つの販売をしている。

収益構造はどちらも導入時の初期設定フィーと継続利用によるライセンスフィーの2つだ。

IR資料によるとPKSHAは7つのモジュールと4つのソフトウェアを販売している。
モジュールはDialogue_1、Dialogue_2、Recognizer、Recommender、Predictor、Detector、Reinforcerの7つである。以下がそれぞれの機能と利用用途をまとめた表だ。

そして、自社ソフトウェアはHRUS、BEDORE、CELLOR、PREDICOの4つである。以下が機能と利用用途をまとめた表である。

そんなPKSHAの売上は順調に伸びている。売上合計は5年間で平均92%の成長率で伸びている。特に、アルゴリズムソフトウェアの成長が著しく、ここ3年間での平均成長率はアルゴリズムモジュールが36%なのに対し、アルゴリズムソフトウェアの平均成長率はなんと233%だ。


そして、PKSHAの大きな特徴は積極的に投資を行っている点だ。

たった1年3か月の間に投資その他の資産を12億円も増やしている。この事実から、今手をまわしきれていないが、技術的に関与したい領域やシナジーが見込める領域に投資という形で関与し、PKSHAがさらに成長したときのことを考えた種まきを行っているのではないかと考えられる。


例えば、PKSHAは株式会社ドクターネットと共同で行っていた画像診断アシスト事業に関わる固定資産を株式会社ドクターネットの親会社である株式会社日本医療データセンター(現株式会社JMDC)へ、日本医療データセンターの普通株式3億100万円分と引き換えに譲渡している。

ゲーム企業から真のAI企業へ向かうHEROZ

HEROZは主にAIを用いたゲームを軸にしたBtoCサービスと、HEROZ Kishinという機械学習サービスの提供を行うBtoBサービスの二つの事業を展開している。


HEROZは10のAIエンジンを開発しており、それらのエンジンを組み合わせたHEROZ Kishin MonitorとHEROZ Kishin Testingといった製品を提供している。

HEROZは2017年4月期までほとんどゲームの会社だった。HEROZ関係者によるとBtoBサービスであるHEROZ Kishinによる売り上げが立ち始めたのが2,3年前からだということだ。HEROZの主要顧客を見ると、2017年4月期まではゲームプラットフォームであるApple、Google、協業しているポケモン、DeNAからの売上で8割以上を占めていた。

だが、2018年4月期からBtoBサービスの比率が上がりだし、IR資料から推測すると2019年4月期にはBtoBの売上がBtoCの売上を上回る。HEROZはゲーム会社からAI企業へと成長しているのだ。


HEROZはBtoB事業の比率が高まるに連れて営業利益率も上がっている。ゲーム事業はプラットフォームを提供するAppleやGoogleに対し課金時の決済手数料や支払手数料を支払わなければならないため、どうしても売上原価が上がってしまうのに対し、BtoB事業は売上原価にかかる変動費が特にないからだ。

安定した利益で開発を続けるユーザーローカル

ユーザーローカルはUser Insight, Social Insight, Media Insightの3つのデータ分析プラットフォームとサポートチャットボットという業務支援ツールの提供を行っている。

ユーザーローカルの各製品の活用事例と導入実績企業をまとめたのが次の表である。

ユーザーローカルPKSHAHEROZのように爆発的な増加ではないものの、安定して業績を上げ続けている。営業利益率も30%以上をキープし続けている。

ユーザーローカルの特徴的な点は研究開発費だ。2016年6月期に比べ、2018年6月期の研究開発費は3倍程度になっている。ユーザーローカルは画像認識や文書自動要約システムといった新しいサービスの開発・提供を続けている。

四半期売上高、主要顧客ともに大きく変動!実態をつかみづらいKudan

KudanはAIの目に相当する部分であるAP(人口知覚、Artificial Perception)技術を用いたサービスKudanSLAMを販売している。

SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)とは、画像やセンサ情報等から三次元で地図作成を行い、同時に自己位置も推定していくソフトウェア技術のことである。これらの技術は、自動運転やADAS(先進運転支援システム、Advanced Driver Assistance System)、ドローン、産業用ロボットなど、カメラが搭載されたあらゆるデバイスでの活用が期待されている。

Kudanが成長企業かという問いについては少し慎重に考えなければならない。確かにKudanの売上は2018年6月期が2億500万だったのに対し、2019年6月期では3億7600万円とすでに1.8倍以上伸びている。しかし、四半期ごとの売上構成をみると第3四半期までの累計のうち、第1四半期の売上が6割ほどを占める。


そして、Kudanの売上は他の会社とは違い、多くが開発着手金で継続フィーをまだあまり獲得できていない。

各会計期の主要顧客を見ると売上高の10%以上を占める企業の名前は毎年変わっている。
Kudanが成長企業であるかどうかを見極めるには今後継続フィーを獲得できるようになるかが大事な論点だ。

いずれにせよ、上場してからまだ日の浅いKudanに関しては情報が少ないため公開資料だけでは実態をつかむのが難しい。今後の動向に注目したい。

サービス型AI企業総論

同じサービス型AI企業と言っても各社特色がある。ここまでの話をまとめると、サービス型AI企業を見るうえで、大事な論点は継続フィーをきちんと獲得できるかだ。

しかし、これは財務から各社を分析した結果に過ぎない。AI企業にとって最も大事なのは言うまでもなくAI技術だ。各社がどのようなAI技術を保有しているか、どのようなAIエンジニアを抱えこめているのか、そして開発体制が今後も持続可能なものであるのか。サービス型AI企業の真価を見極めるにはこれらの点に留意すべきだ。

次回は、「プロジェクト型」AI企業であるRPAサインポストLTSについて見ていく。同じAI企業でも、「サービス型」とはまた違った特色が見える。
(次回、プロジェクト型へ続く)

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