ドラッグストア業界再編、ココカラはなぜ “モテる” のか | QuestHub Insights

ドラッグストア業界再編、ココカラはなぜ “モテる” のか

6月に入ってドラッグストアに再編の大波が押し寄せてきている。業界7位のココカラファインに対してマツモトキヨシHDスギHDが経営統合を持ちかけたのだ。ココカラはこれらの“求婚”に対して特別委員会を設置。7月末をメドに開かれる委員会からの報告を踏まえ検討していくという。

どちらと統合するにせよ、統合によって誕生する企業グループは売上高で業界トップに躍り出る。18年度の売上高トップはツルハHDで7824億円だが、ココカラマツキヨが合併すれば売上高の合計は9766億円、スギと合併すれば8891億円となる。

なぜこのタイミングで大型合併が取り沙汰されるようになったのか。もちろん、経営陣同士の関係性や業態の細かい違いといった着目すべき要素は多数ある。その中で今回注目したのは、大手への集約が進むドラッグストア業界の生き残り事情だ。5年前と現在の業界を比較・分析することでココカラマツキヨスギの立ち位置が見えてくる。
(QuestHub Insights編集部)


(統合する3社、編集部撮影)

ドラッグストア業界の変化。進む寡占化

まず、業界全体の変化を俯瞰してみよう。ドラッグストア全体の市場規模は2013年度の6.0兆円から18年度には7.3兆円へと拡大しており、着実に成長していることがわかる(図1)。

もう一点、注目したいのが市場の寡占度だ。13年度における上場ドラッグストア大手10社の売上高合計は3.1兆円で、市場全体の55%に当たる。これは小売業界のなかでは低い数字だ。例えば、コンビニ業界ではセブンイレブンファミリーマートローソンの3チェーンで9割以上を占めており、スーパーマーケット業界もイオンを筆頭に大手10社で約7割のシェアを握る。大手だけでなく、地場の中小規模チェーンも根強く残っているのがドラッグストアの特徴だった。

だが、この5年間でその特徴もだいぶ薄れつつある。大手による中小チェーンの買収が進み、業界の寡占化は高まる一方だ。例えば、イオン系のウエルシアHDは15年に同じくイオン系列の3社を子会社化して一気に規模を拡大。ツルハホールディングスも17年に静岡県を地盤とする杏林堂(16年度売上高894億円)を買収している。ウエルシアツルハを中心とした買収合戦により、上位10社のシェアは69%まで上昇した。

市場全体が寡占化するにつれ、大手同士の競争も熾烈さを増している。まず、13年の状況を見てみよう(図2)。当時はマツキヨサンドラッグが2強として君臨。3位から7位までの5社が3000億円台でほぼ横並び状態で第2グループを形成していることがわかる。スギは3位、ココカラファインも5位で上位陣に食い込めている。

そこから18年度までの5年間で順位はガラリと変動した(図3)。積極的に買収を繰り返したツルハウエルシアが2番手グループから抜け出し新たに2トップを形成。2番手グループのハードルは3000億円台から5000億円台へと上がり、企業数も3社へと減った。

また、今回取り沙汰された3社はいずれも順位を下げている。トップに君臨していたマツキヨは5位へと転落。不採算店舗の整理に手間取り、店舗数を伸ばすことができなかったためだ。さらに、スギココカラは2番手グループからも引き離されつつある。

”モテる”ココカラとドラッグストア業界の今後

ここまでの業界動向を踏まえれば、求婚対象としてのココカラの重要性が見えてくる。ココカラとの合併が成立した側の売上高は現トップのツルハを約1000億円うわまわり、一気に業界の主導権を握る事ができる。

逆に、合併を断られた側はトップ争いへの参入が難しくなる。業界順位7位以下はココカラよりも規模が一回り小さくなるため、仮に買収に成功してもココカラとの合併に成功した陣営の売上高を超えることはできない。ちなみに、3社統合は3社とも否定的だと報じられている。

また、「お値ごろ感」もココカラの魅力だ。2019年7月12日時点でのココカラの時価総額は1500億円だが、これはマツキヨスギの半分以下。売上高でココカラを下回るクリエイトSDクスリのアオキHDの時価総額よりも小さい。

時価総額を押し下げている要因は利益率の低さだ。ドラッグストア大手の営業利益率は概ね3%台後半から6%のレンジにある。対してココカラの営業利益率は長らく2%台を継続。ここ数年の利益率は3%台に改善したものの、他社の水準には届いていない。

ココカラは13年に「ココカラファイン」ブランドへの統合を行ったが、それまではグループ内の6社が別々のブランドでチェーン展開を行う体制だった。そのため、グループ内での効率化に時間がかかっていた。

低い利益率は時価総額を押し下げている一方、合併先であるマツキヨスギにとっては「伸びしろ」とも捉えられる。合併後に自社のノウハウを注入し収益を改善すれば、結果として割安な価格でココカラを手中に収めることができるからだ(もちろん、収益改善に成功すればの話ではあるが)。

さて、気になるのは今回の合併が成立したら、次にどこが動くかだ。下図はマツキヨココカラが合併した場合における大手の売上高だ。仮にスギと合併した場合でも、マツキヨスギの立場を入れ替えただけで状況は同じである。

注目したいのはかつての業界2位、サンドラッグの動きだ。サンドラッグは07年から09年にかけて3年連続で買収を実施するなど、かつては買収に積極的な会社だった。ただ、10年以降は目立った動きを見せておらず、競合他社に追い越されつつある。買収余力は十二分。有利子負債はゼロで700億円の現金同等物を保有している。今回の大再編に刺激されて再び動き出すのか、要注目だ。

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