土産菓子で時価総額2300億円!鳥取県の雄、寿スピリッツの素顔に迫る | QuestHub Insights

土産菓子で時価総額2300億円!鳥取県の雄、寿スピリッツの素顔に迫る

鳥取駅から電車で1時間半、そこからさらにバスで乗り継いだ先にあるに米子市旗ヶ崎に本社を構えるのが、時価総額2300億円を誇る菓子大手、寿スピリッツだ。と言っても、会社名でピンとくる人はそう多くはないだろう。同社が扱うのはコンビニやスーパーで販売している一般的な菓子ではなく、土産物菓子だ。寿スピリッツは「寿製菓」「シュクレイ」「ケイシイシイ」など複数の菓子会社の元締めで、「東京ミルクチーズ工場」「ルタオ」「因幡の白兎」など数多くの菓子を展開している。近年では旅行土産としてだけでなく、より広い意味での「ギフト菓子」としての認知が広まっており、寿スピリッツは「プレミアムギフトスイーツ」として展開している。

寿スピリッツの注目ポイントは、成熟市場である国内菓子市場では数少ない、収益性と成長を両立した成長企業であることだ。下図は寿スピリッツと同業の業績を比較したものだ。ひと目見て分かる通り、他社が成長率ほぼ横ばい、営業利益率も10%を切る水準なのに対して、寿スピリッツは成長率、営業利益率ともに格段に高いことがわかる。

成長率、利益率ともに圧倒的

(出所)各社決算資料

成長の起点となったのが、2016年1月に行った洋菓子会社フランセの買収だ。フランセは元々明治HDの子会社だったが、経営不振に陥り寿スピリッツに買収されたときの価格はわずかに1円。翌2017年にはグループ子会社シュクレイと合併、首都圏での店舗展開を強力に推し進めたことが成長の原動力になっている。さらに、近年では首都圏空港での販売を通じたインバウンド需要の取り込みにも成功している。

下の2つのグラフは、直近10年間の売上高、および4年間の地域別売上高だ。これを見ても、2015年度のフランセ買収以降に首都圏での成長が加速。それによって大きく業績が拡大していることが分かる。

2015年度から成長に弾み

(出所)寿スピリッツ決算資料

首都圏の拡大が成長の原動力

(出所)寿スピリッツ決算説明会資料

上の地域別売上高を見れば分かる通り、2015年度までは各地域まんべんなく稼いでいる状況で、首都圏に強みが合ったわけではない。さらに、首都圏における小売店舗の展開もフランセ買収から本格化したものだ。買収した赤字会社の立て直し、首都圏の育成ともに簡単なことではない。河越誠剛社長は、成長の裏には独自の「超現場主義」があるという。詳細を聞いた。
(QuestHub Insights編集部 渡辺拓未)


寿スピリッツの河越誠剛社長)

--寿スピリッツはフランセをはじめ、2005年の九十九島エスケイファーム(現九十九島グループ)の製造・販売事業継承など、不振会社の買収・再生を通じて事業を伸ばしてきました。
我々は倒産した、もしくは倒産しそうな会社を買収して伸びた会社だ。前提としてあるのは、いい会社を高い値段で買ってくるよりも、そうした会社の方がやりやすいということだ。企業というのは理念、つまり判断基準と目指すべき目標を共有しなければうまくいかない。

不振企業と優良企業でどちらが理念の共有をしやすいか。それは前者だ。一度不振に陥った、藁にもすがる思いの会社の方がやりやすい。

--赤字会社を買収する場合、その後再建しなければいけません。具体的にはどのように行うのでしょうか
まずは、できるだけ小さくすること。従業員は継続雇用するが、それ以外の部分、つまりお客様も商品も削いで削いで、良いところだけを残す。フランセの場合、2年をかけて関東のお客様だけに絞った。その上で、商品ラインナップも高価格帯で美味しい商品にリニューアルした。

高価格帯に移行するときに「売れない、うまくいかない」と言われたけれども、美味しかったら口コミで広がる。なので、商品・売り場・接客の3つを徹底的に磨いた。特に接客ではアルバイトをどんどん正社員化していった。買収した当初は接客で正社員はゼロだった。その上で、どうやったらお客様が喜んで買ってくれるか、次来てくれるか、熱狂的なファンになってもらえるかを考えさせ、売り場全体を改善していった。

--土産菓子店において、「熱狂的なファンが付く」とはどういうことなのでしょうか。
1人の接客が受けたくてその人に会いに来る、売り場のムードを味わいに来る。「あそこのお菓子美味しいよ」と周囲に話してくれる。そういう人を増やすということだ。大規模なCMを打つよりも、「今日1人熱狂的なファンを作ること」の方がはるかに有効なマーケティングだ。そのために1個のケーキ、1回の接客、1回の売り場のムード作りがある。

そのためには、お客様の前に従業員仲間が熱狂的ファンになることが重要だ。働く人がファンだからこそ、周囲の人、お客様をファンにすることができる。そのために必要なのが自己肯定力で、それを高めるために「褒める朝礼」を行っている。

--褒める朝礼とは。
寿スピリッツには120の項目で構成される経営理念手帳がある。みんなでこの経営理念を実践して、朝会の場でその成功事例を発表し、それをみんなで褒める。これが褒める朝会だ。書かれている経営理念自体が重要というより、自分で主体的に物事に取り組み、それを認めてもらうことで自己肯定感を高めることが大切だ。自己肯定感とは、自分自身が素晴らしい存在であると認められていることで、それを育むのは他人の評価だ。

さらに、褒める内容にも特徴がある。それは結果ではなくプロセスを評価することだ。徒競走で例えると、子供が100メートルを14秒で走ったとしたら、14秒という結果自体ではなく、どうやったら走れるようになったのかを聞き、そこを褒める。なぜなら、結果は次に持ち越せないが、培った練習手法やメンタル力は次に生かせるからだ。結果だけ褒めると「このおっさん数字しかみてないのか」と思われて組織としてもうまくいかないしね。このようにして、成功プロセスをみんなで共有することで良いサイクルが生まれる。

また、成功の共有というと「それを横展開しているのですか?」と聞かれるが、これは逆で、「同じことはやるな」と言っている。

なぜなら、成功事例は結局他人が成功しただけで、自分とは置かれた状況が違うからだ。東京駅の店舗と立川の店舗ではお客様の来店頻度も単価もライバルも違う。なので、成功事例を共有された人はそのプロセスの真髄を理解して、自分なりに目標設定と対策を行わなければいけない。ここまでを現場で行うことで「超現場主義」と言えるものができると考えている。

そうして良いところを伸ばしていくと、現場に主体性ができる。その上で、本気の社員にはどんどんやらせる。東京で一番売れている店舗なんか、今は2年目の社員が店長をやっている。

--そうした「超現場主義」において、社長の役割とは。
夜一緒に食事をする。良いことをしたら激励する。たまに「社長が現場に行ったら×」というCMを見るけれども、現場に行かずに何が分かるのかと思う。もちろん、その場で直接店員さんに指導するのは違う。ただ、現場を知ること、その上で現場のモチベーションを上げることがまさに社長の仕事だと考えている。

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