ソースネクスト、AI翻訳機”ポケトーク”ヒットで躍進も息切れ懸念 | QuestHub Insights

ソースネクスト、AI翻訳機”ポケトーク”ヒットで躍進も息切れ懸念

 最近、家電を買いに東京・秋葉原にある大型の家電量販店へ立ち寄った。ウィンドウショッピングを兼ねて店内を歩いていると、ある異変に気づいた。どのフロアに行っても同じ商品の売り場があるのである。

その商品とは、ソースネクストが販売している小型翻訳機「ポケトークW」だ。ポケトークは手のひらサイズの電子機器で74言語の音声翻訳を行うことができ、「夢のAI通訳機」の宣伝文句で販売されている。店舗のほぼ全フロアに売り場があるだけでなく、カメラや家電を売っているフロアに至っては1フロアにつき2つも売り場があった。
(QuestHub Insights編集部 渡辺拓未)

ポケトーク売り上げで売上高激増

会社ホームページ上の製品紹介も今やポケトークがトップに来ている。
出典:ソースネクスト ホームページ https://sourcenext.co.jp/business/detail/product/

 ソースネクストはもともとセキュリティソフト「ZERO」やはがき作成ソフト「筆まめ」などの比較的安価なパソコン向けソフトを展開してきた会社で、売上高も50~60億円程度を行き来していた。それが一変したのは2017年12月にオランダのトラヴィス社と共同開発した翻訳機、初代「ポケトーク」の大ヒットだ。

翌18年9月にはすかさず自社単独開発の2代目「ポケトークW」を投入。さらにはタレントの明石家さんま氏を起用したテレビCMを放映するなど大々的な広告宣伝を行い、「小型翻訳機」という製品ジャンルを国内で確立していった。その結果、19年3月期には一気に以前の約3倍にあたる147億円もの売上高を達成している。

キャッシュフローの推移を見ても、ソースネクストが攻めの経営に転じていることが分かる。

注目したいのは財務キャッシュフローで、2度の大型資金調達を行っていることが分かる。1度目は17年3月期で、無借金経営を続けていたソースネクストは約20億円の借り入れを実施。この借り入れ自体は言語学習ソフトであるロゼッタストーンの国内独占販売ライセンス取得が主な用途であり、ポケトークに使われたわけではないが、ソースネクストが無借金経営という安定を捨てて勝負に出たことを示している。

2度目の資金調達は18年。今度は行使価額修正条項付新株予約権の発行・行使により約50億円を調達した。こちらは2代目となるポケトークWの発売に先立つもので、主にポケトークWの製品開発や広告宣伝に使われた。

新株予約権発行時のリリース

50億円の資金調達でポケトークの展開に全力を注いだ

出典:新株予約権発行時のリリース https://ssl4.eir-parts.net/doc/4344/tdnet/1591599/00.pdf

 さて、気になるのは「ポケトークの売り上げは一体どの程度なのか」という点だ。実は、ソースネクストは決算資料上でポケトークの売上高を公開していない。プロダクト別売上高は開示しているが、ポケトークは「その他」にまとめられてしまっている。

ソースネクストの2019年3月期決算説明会資料

 出典:ソースネクストの2019年3月期決算説明会資料より

 ただし、推測する材料はある。今回は2つのアプローチからポケトークの売上高を試算してみた。

一つは、「その他売上高」からポケトーク以外の売り上げを差し引く方法だ。ポケトークを発売する前の決算まで遡ると、「その他売上高」は四半期あたり7~8億円で推移してきたことが分かる。その状態が現在も変わらないと仮定すると、19年3月期の第4四半期3ヶ月間(19年1~3月)における「その他売上高」34.8億円のうち26.8億円~27.8億円がポケトーク関連と計算できる。

もう一つが、会社が発表している出荷台数リリースから推測する方法だ。ソースネクストは出荷台数10万台ごとにリリースを出している。それによると、2018年12月20日に20万台、その約2ヶ月後の2019年2月末に30万台、さらに2ヶ月後の同年4月23日に40万台を突破した模様だ。

これらのリリースを見ると、1ヶ月に5万台のペースで出荷されていることが分かる。ポケトークWの主要モデルの小売価格は29,880円。家電量販店などへの卸値を小売価格の7割と仮定すると20,916円となる。これらの数字を用いて2019年3月期の第4四半期のポケトーク関連売り上げを計算すると、3(ヶ月)×5(万台)×20,916(円)=31.3億円となる。

二つの方法で算出された結果はおおむね一致している。これらから30億円前後が四半期あたりのポケトーク関連売り上げと言えそうだ。19年3月期の第4四半期の売上高が44.7億円なので、売上高全体の約3分の2をポケトークが占めていることになる。

ポケトーク大ヒットの勢いに乗り、ソースネクストは強気の業績予想を出している。20年3月期は売上高が200億円の大台に乗り、営業利益は16億円と前の期比86%増となる計画だ。前期は広告宣伝費がかさみ利益率が悪化したが、広告宣伝費はコントロール可能。売り上げ計画さえこなせば達成できる水準と言える。

肝心の売り上げ計画を達成できるか。ポケトークの今後次第だが、簡単ではない。200億円がどの程度の水準かと言うと、2018年9月に発売されたポケトークW効果で急拡大した2019年3月期第4四半期の売上高44.7億円が年間通して続いても177億円で及ばない。

その上、発売から半年以上が経過するポケトークWの息切れも懸念される。冒頭訪れた大型家電量販店で店員に売れ行きについて尋ねたところ「この手の機器は買う人は買うし、買わない人は買わない。購入する層にはある程度行き渡ったため、発売直後と比べると売り上げペースは落ちている」と話した。

実際、19年3月期の売上高147億は前の期と比べて大幅に増えたものの、会社予想の168億円は未達。決算発表時のリリースにて、会社は「特に郊外の家電量販店での販売が当初想定よりも緩やかに進行したこと」と説明している。

今後ポケトークの販売を伸ばすために同社が注力しているのは「法人向け」と「海外」だ。法人向けにおいては訪日外国人の増加が見込まれていることから、外国語でのコミュニケーションが必要になる飲食店や小売店などに向けポケトークの展開を強化している。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに特に照準を合わせている。

海外展開ではオランダに拠点を設立してヨーロッパに進出。韓国でもOEMで商品提供を行っている。ただし、欧米には初代ポケトークを共同開発をしていたオランダのトラヴィス社を含め競合がすでに存在している。

これらの多面展開がうまく行けば200億円の目標達成も不可能ではないが、ハードルは高い。さしあたっての注目点は、出荷40万台達成の約2ヶ月後にあたる6月末。そこで50万台出荷リリースが発表されるかが試金石となりそうだ。

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