【独占】「物言う株主」代表 丸木強氏に聞く、アクティビズムの醍醐味とは? | QuestHub Insights

【独占】「物言う株主」代表 丸木強氏に聞く、アクティビズムの醍醐味とは?

上場企業の株主総会が集中する6月が終わり、各社の議決権の行使結果も一通り明らかになった。目立ったのは、株主還元の強化やガバナンスの改善を求める「物言う株主」としてのアクティビストの株主提案だ。日本で活動するアクティビストの一つ、ストラテジックキャピタルは今年も中堅ゼネコンの浅沼組や、産業向け機械などを扱う専門商社の極東貿易など4社に株主提案を実施した(うち1社は後に取り下げ)。結果としてはいずれも否決されたが、3割近い賛成比率を得る提案もあったほか、株主総会に先立って会社側が大幅な株主還元を発表、”実を取る”ケースもあった。

アクティビストの主張に対して投資先の経営陣は対決姿勢を取ることが多く、望む結果を得るまで長期戦を要するケースもある。通常の運用と比べて苦労の多い投資手法にも見えるが、実態はどうなのか。ストラテジックキャピタルの丸木強代表取締役に聞いた。
(QuestHub Insights編集部 渡辺拓未)


ストラテジックキャピタルの丸木強代表取締役)

--アクティビストといえば、企業から煙たがられる存在で、手間もかかる投資手法というイメージがある。数ある運用手法の中でなぜアクティビストを選んだのか
上場企業があるべき姿を論理的に伝え、それを実行してもらうことにより企業価値が向上するこの取り組みが、投資家にも企業にとっても良いことだと思うからだ。

私としては本当に日本を良くしたいと思ってやっている。もっと日本企業に頑張ってもらわないと、日本経済はこれから本当に衰退していく。日本経済はこの20年間全く成長していないが、上場企業の自己資本は3倍になっている。日本はアメリカの約3分の1の経済規模にもかかわらず、非金融部門が保有している現預金は絶対額でアメリカよりも多い。

つまり、会社が利益を社内に溜め込んでしまった結果、経済が極めて非効率になってしまっている。アクティビストとして企業に働きかけることで、溜め込んだ現金をどんどん社会に還元させていきたい。使い道は事業投資でも研究開発でもいいし、使い切れない現金は配当すべき。その資金がまた別の投資に向かうことにより、資金が循環し経済活動が活発になる。

2014年に消費税率を上げた際に、5兆円くらい政府が景気刺激策を行った。消費税を上げたら景気は低迷するので、政府が借金して5兆円を使うということだが、上場企業が200兆円以上持っている現金のうち2%余りを追加で投資するだけで同じ規模となる。国民の借金を増やさなくても、もっと大企業がお金を使えばよかった。企業が溜め込んだ現金を社会に還元するというのは、使うということで、それなりの効果があると思う。

(出所:ストラテジックキャピタル)

--直近では大手印刷会社の図書印刷や中堅ゼネコンの淺沼組極東貿易世紀東急工業といった会社に株主提案を行っている(うち図書印刷は株主総会前に取り下げ)。どのような投資方針なのか
私達が投資しているのは溜め込んだ資産を有効に活用できていない会社が多い。必ずしも成長を求めてはいないが、本業は安定している会社に投資したい。
それと、ガバナンスの悪い会社も投資対象。今では大抵の上場企業には社外取締役がいるが、本当に独立性があるのか・自身の社外取締役としての役割をわかっているのか疑問が残る社外取締役も多い。また、役員構成で言えば、例えば現在投資している京阪神ビルディング(住友系の不動産賃貸会社)は4%の株主にすぎない住友銀行(現三井住友銀行)のOBが常勤役員の過半数を占めている。要するに上場企業の取締役の席が特定企業のOBに私物化されているということ。そういう会社もある。

つまり、改善の余地がある会社に投資したい。そうした会社は、良くなれば株価が上がる可能性が高い。会社のキャッシュフローが増えなくても、ガバナンスや会社の資本配分のあり方を変えるだけで企業価値が増えるかもしれない。そういう企業に投資することでリターンを狙っている。

--そうした改善余地のある会社は日本に少なくないと思われるが、どのような優先順位で投資を行っているのか
投資対象となり得る企業、すなわち、資産を過剰に保有してガバナンスも悪い企業、は非常に多い。そして、改善の余地が多いほど良い投資対象である。ただし、当然だが株価は割安の方がいいし、自分のポートフォリオを見てバランスも考えている。

例えば、買収防衛策を策定しているような会社は、自社の株価が安いと告白しているようなものだから投資しやすい。そして、もし経営陣が投資家の言うことに耳を傾ける人たちなら投資対象としては良いわけだ。

逆に、親子上場、創業家が大株主、ガバナンスが悪い、投資家対応が悪い、株価割安といった条件が揃っている企業は買う前から経営者の考えを変えるのは大変だと分かる。ただ、そういった難しそうな案件に投資することは、自分たちの投資方針であるアクティビストの特徴でもある。そして、このような会社ほど、株価が割安なのだ。経営方針変更を働きかけることが困難ではない、少なくともそう思われる投資先と、大変な案件をバランスよく織り交ぜているつもりである。

--アクティビストの中には、毎日会社に電話するなどして強硬に圧力をかけるところもあると聞くが
毎日はしない。確かに昨年末には「なんでこんなに株価が下がっているのに何もしないのか、自社株買いをすべきだ」という電話を何社かにした。でも、基本的に電話するときは何らかのイベントがあったり、発表があったりするとき。

社外取締役を含めて投資先の会社の人間と面談するのも1社あたり年間10回くらい。あまり頻度が高くても毎回同じことを言うことになってしまうだけ。それ以外にも、投資先によっては年に何通も手紙を出すこともある。
現状では、最初からは法律上の株主の権利の行使などのハードなやり方はしない。ある一定の期間、何回か株主価値向上の説明・提案などのコミュニケーションを行う。それでも株主価値向上の施策に向けた動きが見えない場合に、株主提案などを行ったりしている。

--増配や自社株買いといった株主還元への要求に否定的な経営者とのコミュニケーションは実際どのようなものなのか
そうした経営者は、「自己資本を積み上げて、財務基盤を盤石にしたい」、「なにかあった時に備えたい。それが株主様の利益になります」などと言うが、それは実は株主の利益を無視して自分たちだけが楽をしようという独善的な考え方だ。配当を抑えて現金などの資産を溜め込んで、それで株価が上がるはずがない。自己資本は増える一方で、株価は上がらず、株価のバリェーションが下がっていく企業が多い。

現状では、株式会社の原理原則は株主の利益の最大化であることを理解しないで、自分たち、つまり役職員の利益しか考えていない経営者は少なくない。このような経営者は、「株主の利益ばかり追求できない。会社にはそれ以外のステークホルダーもいるし、彼らの利益も考えなければならない。」と、言い訳をする。

私は、こうした考えを持つ経営者のことを以前は「悪い人」だと思っていたが、今は「株式会社の目的などについて分かってない、又は知らない人」だと思っている。
我々は、株式会社の本来の目的である、株主の利益の最大化を目指して欲しいと考えている。そこで、我々は経営者に対して一から説明する。

誤解して欲しくないのは、我々は株主だけを大事にして従業員などのステークホルダーを軽んじているわけではないということ。経営者は、株主以外の従業員や取引先などを含めたステークホルダーにとっても良い会社にすることを目指すべきなのは当たり前だ。例えば、従業員が幸せに働ける会社は業績も良くなるはずだ。株主の利益とステークホルダーの幸福を両立できるのが優れた経営者だと思う。

--そうした会社に少数株主として主張を通していくことになると思うが、最終的に理解は得られるのか
3つのタイプがある。「確かにそうかもしれないな」と我々株主の意見を理解するタイプ、これが2割くらい。「本当は嫌でやりたくないけど、最近はそういう風潮だしな、と嫌々やる」タイプが4〜5割。残りは、「どうやって煩い株主を追い出そうか」と考えるタイプ。3つ目のタイプはもちろん配当を増やすこともあるが、筆頭株主によるTOB(株式公開買い付け)やMBO(マネジメント・バイアウト、経営陣による買収)、それから親会社が100%子会社化することによる非公開化へ動くこともある。今後は、第一のタイプが少しずつ増えていくと期待している。

ただ、株主価値向上の話など聞く気がなく、やる気も無い経営者に対して、そのために何をすべきかの話を聞いてもらうのは大変だ。聞いているフリをしているだけで、全然耳に入っていないと感じる。コーポレートガバナンス・コードの意味は全く理解していないが遵守する振りをしているのと同じだ。

(出所:ストラテジックキャピタル

投資先の役員の中にも、私が一生懸命話している間ずっと下を向いている方がいた。隣にメモを取る係の人も座っているのだし、顔上げて対話して欲しいと思うのだが、質問を投げかけてもまともな答えが返って来ることはない。そんな面談を何回も繰り返した投資先もある。

そうした役員がいる会社を変えようとするのだから我々もハードワークしないといけない。我々は、感情的になることなく、常にロジカルな説明に努めている。そして、会社との面談だけではなく、株主提案を何回もしたり、手紙を何回も出したり、その会社の課題について特設ウェブサイトを立ち上げたり、新聞広告を出したり。

日本ではまだ難しいが、アメリカでは1%程度の保有比率でもアクティビズムが成功する。それはなぜかというと、他の多く株主が賛同してくれることが容易に想像されるから。我々は株主提案で過半を取れなくても、20〜30%くらい賛成票が集まれば、それは経営者に対して影響力はあると思っている。

株主提案に30%集まったときの経営者の反応には2つのパターンがある。「株主提案の賛成は過半は集まらなかったから、今の経営方針のままで良い」と考えるか、「30%も反対されているから、経営者として少し考えないといけない」と考えるか。真面目な経営者であれば、後者のように思うはずで、20~30%あれば経営者に「なにかしなければいけない」と考えてもらえると期待している。日本ではまだ時間がかかるかもしれないが、これからアクティビストの提案にもっと多くの株主が賛同してくれるようになると、さらに大きな力になるだろう。

--最近ではマネックス証券が個人投資家向けアクティビストセミナーを開くなど、個人投資家の株主活動も期待されている
マネックス証券のセミナーについては全く知らないが、個人投資家ならば、やはり若い人たちに期待したいと思う。というのは、我々が株主提案した経験からは、個人投資家の議決権行使比率は30%程度と低いからだ。年配の人たちの考えが変わるに越したことはないが、自分たちが有権者だ、主権者だ、という意識が薄いと感じる。

私は株主総会によく出席するが、隣に座っていた個人株主が「今日は社長さまにお会いできて光栄です」と発言していたりする。そんなにへりくだらなくても、あなたは主権者で社長を選んでいる立場だからと思うのだが、そんな方がまだ多い。

私の同級生で医学部の教授の方でも「株主風情が社長にそんなこと言っていいのか」とか言う。知的水準が高い人でもそんなもの。だから「自分たちが主権者だ」という意識を持てば、株主総会の雰囲気も変わってくると思うし、議決権行使も変わってくると思う。

それと、やっぱり最後はそこに行き着くのだが、教育の問題があると思う。日本は資本主義の国なのに、中学や高校で、資本主義が何か、株主とは何か、ということを正しく教えていない。昔、私より少し若い世代の入社試験で「取締役とは取り締まる人です」と回答した大学生がいたらしいが、学校で大切なこと教えていないからそういった間違いが出てくる。特に上場企業の取締役に対しては、株式会社とは何か、株式会社の取締役の責務は何か、ということを理解しているかどうか、上場審査で確認しないといけないとも思う。私も実は最初分かっていなかった、分かったのは30歳を過ぎてから。

議決権行使で取締役選任について投票するのは選挙と同じだ。選ばれる人というのは、選ぶ人のレベルに合った人になる。株式会社の役員のレベルが低いというのは株主のレベルが低いからだ。例えば、日本経済新聞「私の履歴書」の社長交代のエピソードで「社長にある日突然呼ばれて次期社長に指名されました」というのが美談みたいに書かれている。こんなのはダメだ。でも、今までの株主はそれを黙認していたのだ。しかし、最近は面白い動きもあった。株主が真剣に経営者を選ぶという意味で、今般のLIXILの件は良い事例となったのではないか。

たまに偶然に非常に優秀な経営者は現れることもある。しかし、経営者候補選抜を仕組みとして確立すべきだろう。日本でも指名委員会を整えて、次の経営者を育てて選別するシステムをどう構築するかといった議論が徐々にされるようになってきた。本当はすぐ変わって欲しいけど、これから少しずつ変わっていくのではないか。

丸木強(まるき・つよし)
1982年東京大学法学部卒、野村證券入社。99年村上世彰氏らとM&Aコンサルティング(のちのMACアセットマネジメント、村上ファンドとも呼ばれる)設立。2012年にストラテジックキャピタルを設立した。

ストラテジックキャピタル
丸木強氏が2012年に設立した投資運用会社。国内上場企業へ投資し、株主還元やガバナンスの改善を働きかけることでリターンを目指すアクティビストファンドを運営している。これまでの投資案件はアイネス大和冷機蝶理図書印刷浅沼組など。

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