テレビ局は吉本以外にどこの株を持っているのか? | QuestHub Insights

テレビ局は吉本以外にどこの株を持っているのか?

「在京5社、在阪5社(のテレビ局)は吉本の株主だから、大丈夫やから」。

 昨今お茶の間を賑わせ続けている吉本興業HD所属芸人の闇営業問題。20日に宮迫博之氏(雨上がり決死隊)と田村亮氏(ロンドンブーツ1号2号)が開いた会見で飛び出した“爆弾発言”が冒頭のコメントだ。両名が謝罪会見を行う前に行われた吉本との面談で、吉本側の人間から出てきた発言だという。
(QuestHub Insights編集部 渡辺 拓未)


(2013年7月の吉本興業(当時)の公式ホームページより編集部作成)

この発言について吉本は翌21日に開いた岡本昭彦社長らによる会見で「株主であるテレビ局に時間帯などについて配慮しなければならない」(同社)という意図だったと弁明している。吉本側の真意がどうであれ、テレビ局と吉本の癒着についての懸念が広まる結果となった。

吉本は1949年に大阪証券取引所に、61年に東京証券取引所に上場したが、2010年に在京キー局5社や電通などが出資した特別目的会社(SPC)による株式公開買い付け(TOB)で上場を廃止した。上場廃止直前にあたる2009年3月期の有価証券報告書に記されている大株主を見ると、上位10社の中にテレビ局は見当たらない。テレビ局との資本関係は上場廃止に伴って急激に強まった。

上場廃止後、同社は13年ごろまでは公式ホームページ上で株主構成を公開していた。


(2013年7月5日の同社ホームページより)

過去のホームページ内容を収集・保管しているサービス「Internet Archive Wayback Machine」を利用して当時のサイト(2013年7月5日付)を閲覧したところ、確かにフジ・メディア・ホールディングスの6万株(12.1%)、日本テレビ放送網、TBSテレビテレビ朝日の各4万株(8.09%)など「在京5社、在阪5社」を筆頭にメディア関係企業が吉本の株式を保有。在京キー局5社、在阪準キー局5社を合わせた10社合計で47%の保有比率を占めていたことが分かる。

現在の同社ホームページには保有比率の開示は無く株主名のみ公開となっているが、現在でもテレビ局10社が株主となっているのは変わらない。テレビ局各社は今後、報道だけでなく、株主としても吉本とどう向き合うかが求められるだろう。

今回取り上げているテレビ局が吉本興業株を保有しているような、株価上昇や配当金の受け取りなどによる利益を目的とする「純投資」以外の目的で保有する株式のことを「政策保有株」という。特に、企業同士で相互に株式を保有し合うのが「株式の持ち合い」と呼ばれる状態だ。コーポレート・ガバナンスの議論が進む最近では、資本効率の低下や経営における緊張感の低下を理由に、政策保有株の見直しが進められている。

今回の件では、テレビ局が吉本株を保有していることが話題となった(吉本側がテレビ局株を保有しているかは不明)。テレビ局は「公共の電波を用いて報道する」という社会的な側面を有していることもあり、政策保有株の取り扱いに関してはより慎重さが求められる立場にある。そこで、大手テレビ局の持株会社(テレビ朝日であればテレビ朝日HD)5社の有価証券報告書をもとに、各社の株式保有状況を調べた。


各社の有価証券報告書の特定投資株式から作成
赤文字は相互保有がある銘柄

各社の保有金額トップ5が上図だ。テレビ東京こそ保有金額が少ないものの、他の4社に関しては概ね数百億円から1000億円規模の株式を保有していることがわかる。

個別の銘柄を見ていくと、広告代理店最大手の電通や映画会社の東映など、映像・広告関係で繋がりのある会社が中心だが、中には会社の特徴が出た銘柄もある。

その代表例が、東京放送HD(TBS)が保有する東京エレクトロンだ。東京エレクトロンは半導体製造装置大手で、テレビ業とは一切と言っていいほど関係の無い会社だ。にもかかわらず、TBSは1000億円以上の東京エレクトロン株を保有している。

これは、東京エレクトロンの創業時に、立ち上げメンバーがTBSと関わりのあった関係で出資を受けたためとされている。ちなみに、東京エレクトロンの本社がある赤坂BizタワーTBSの所有物件。こういった点からも両社の関係性がうかがえる。

フジ・メディア・ホールディングスが約500億円保有するヤクルト本社は、乳酸菌飲料「ヤクルト」を製造・販売する会社。こちらも一見テレビと関係ないように思えるが、こちらはプロ野球球団ヤクルトスワローズ関係のようだ。スワローズヤクルト本社が経営権を得る前はフジサンケイグループが経営していた。フジは現在も株式会社ヤクルト球団の株主でもある。

今度は株式持ち合いの状況について見ていこう。図の中で、持ち合いを行っている会社に関しては赤字で示している。ひと目見て分かる通り、ほぼ全てが持ち合いだ。表に出てくる25社のうち、8割以上の21社が持ち合い状態となっている。

中でも、共通して持ち合いを行っているのが、広告代理店大手の電通博報堂DYHD、映画会社の東映、人材・販促メディアのリクルートHDの4社。例えば、電通では5社とそれぞれ下図のような持ち合い関係を構築している。

ただし、互いの保有割合はそこまで高いわけではない。下表は大手テレビ5局が各社に対して平均してどの程度持ち合いを行っているかを示している。例えば、電通であれば5局平均で0.93%を保有しており、逆に電通側は5局それぞれに対して平均で0.98%ずつ株式を持っている。


各社の有価証券報告書の特定投資株式より作成
数値はキー局5社(フジ・メディアHD日本テレビHDテレビ朝日HD東京放送HD(TBS)テレビ東京HD)の平均値

この表を見ても分かる通り、1社あたりの互いの保有割合は概ね1%前後。吉本(2013年時点)の5社合計47%ともなれば経営に影響を及ぼせるが、この程度の割合では資本上の影響度は希薄といえそう。もちろん、持ち合いが存在している時点で“真っ白”とは言えず、取引先としての力関係もあるだろう。そういった点で、持ち合い先との関係は“オフホワイト”といった所だろうか。

テレビ局の持株会社は上場企業であると同時に、社会の公器であるメディアとしての役割を担っているという側面もある。コーポレート・ガバナンスに加え、今回の吉本問題でメディアの保有株式に関心が高まる中で、各社が今後どのようなアクションが実行されるかが注目される。

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